みゅ〜♪SS 『「みゅー・・」 〜another one〜』 作・雀バル雀
とても幸せだった・・・
それが日常である事を、時々忘れてしまうほどだった。
そして、ふと感謝する。
ありがとう、と。
そんな幸せな日常に。
水溜りを書けぬけ、そのはねた泥が体につくことだって、それは幸せのかけらの一部だった。
永遠に続くと思っていた。
ずっと水溜りで跳ね回っていられると思っていた。
でも壊れるのは一瞬だった。
永遠なんて、なかったんだ。
知らなかった。そんな、悲しい事を知らなかった。
知らなかったんだ・・・。
「・・・あるよ・・」
彼女は言った。
「・・ここに・・あるよ・・」
確かに、彼女はそう言った。
・・・そこに今、私はいた。
 
「え!どこ?、繭・・これがいいの?」
「うん・・」
「いや〜さすがお嬢さんお目が高い!そいつは巷で人気のネズミの仲間で『フェレット』ていうんでさぁ。」
<何度言ったら分かるのだ!私は誇り高き白イタチだ!汚らわしいネズミなどではない!>
「名前は『プッシー』ちゃん、っていうんでさぁ・・どうです?奥さん。安くしときますよ」
<私の名は『ノロイ』だ!!だんじて『プッシーちゃん』などではない!>
「繭・・・どうする?」
「これがいい・・」
「はいはい、お買い上げありがとうございます」
 
「へ、・・ホントに買っていきやがった。海岸で拾ってきたイタチなのによ。まあ、あの大飯食らいがさばけるんなら、いいか・・・」
 
「う〜〜〜」
ぶんぶん
<や、やめろ〜!!い、生き物を振り回すンじゃない!このくそガキ!>
「こら、繭。玩具じゃないのよ」
「うん・・・」
ずりずり
<ぐ、ぐはぁあああ!!ひ、引きずって歩くなぁあああ!!>
「繭、晩御飯なにがいい?」
「・・はんばーがー・・」
<お、おかあさん・・・この子を叱ってやれぇ〜>
がっん!
<ぐああ!!いっ石がぁあ・・・気がとおくな・・・>
「・・・プッシーちゃん・・大人しくなったわね」
「うん・・・」
 
「繭〜!ごはんよ・・・・」
「うん・・・」
どたどたどた・・・・
<・・・・・死ぬ・・たぶんこのままでは三日ともつまい・・・・。うぐっ・・全身が痛い・・あのガキ!生き物をなんだと・・・>
(「・・あなた、今日ね繭と一緒に動物買いにいったのよ。ほら、このまえカウンセラーの先生が言ってたでしょ?」)
(「・・ああ、それか。・・何を買ったんだい?」)
(「・・なんかネズミの仲間みたい・・『プッシーちゃん』っていうのよ」)
<私はネズミなどではないと言ってるだろうが!ましてや『プッシーちゃん』など・・>
(「・・ぷっしぃ・・・」)
<ぐあああ!!く、くそガキにまでその名で・・ノロイ島の盟主の尊厳がァ・・>
(「・・しかしネズミなんて・・大丈夫なのか、衛生的に?」)
<て、てめえの娘のほうが・・よっぽど心配だぁ!!>
 
「う〜〜」
ぶんぶん
<ぐはぁあああ!!や、やめろう!!!>
「ふふふ・・繭とプッシーちゃんは仲良しね」
「うん!」
<お、おかあさん、この状況を見てどうしてそんな!?・・ぐ、ぎゃっぁあああ!!>
「あらあら、プッシーちゃんも喜んでいるみたいね?」
「うん!」
ぶんぶんぶん
<うわぁああああ!!だ、誰か助けてくれ〜〜>
「先生の仰るとおりだわ・・生き物との触れ合いが繭の感受性を豊かにしてくれるみたい」
 
「おやすみ・・繭。ふふ・・寝るときもプッシーちゃんと一緒だなんてね」
パタパタ・・・バタン!
<・・・奇跡だ・・二月も生き延びたなんて奇跡だ・・だが・・もうこんな生活・・>
「むにゅむにゅ・・う〜ん・・ぷっしい〜〜・・」
<その名はやめろ!・・しかし・・やっぱり子供だな・・ふん!あどけない寝顔だ>
「う〜ん・・てりやきば〜が〜」
むぎゅ!!
<ぐは!!は、離せぇ・・潰れるぅぅぅ!!>
「いただきます・・・」
<や、やめろ〜〜〜!!食うなぁぁ!!>
ばく!・・・・ぺっ!
「まずい・・・・」
ポイ・・・・・どて!
<ぐっは!・・壁に投げつけるかぁ・・・ぅぅぅぅ・・もういやだ・・こんな生活>
 
「繭〜!ごはんよ〜!」
「うん・・・」
どたどた
<・・・・最後のチャンスだ・・・ノロイ、これが最後のチャンスだぞ・・なあに、どうにかしてノロイ島
まで逃げ帰ってみせるさ・・・さらば、くそガキ!!>
(「・・そういえば、今日はかなり冷え込むらしいぞ」)
(「・・今年は例年になく寒いわね、雨も多いし・・・繭、プッシーちゃん外に出しちゃだめよ、凍死しちゃうからね」)
(「うん・・・」)
<・・・・・・・>
 
まだ私は、こんなところにいる。
悲しい場所だ。
 
ぶんぶん
<ふ・・もうどうでもいいや・・・>
「繭〜・・お買い物してくるから、おるすばんしててちょうだいね?」
「うん・・・・」
ぶんぶん
<慣れてしまえば・・・>
ぶんぶんぶん
<コレも気持ちいいかな・・・>
ぶんぶんぶんぶんぶんぶん
<・・・ぎゃああああ!!!>
「・・・・・ん?」
ぶ〜ん ぶ〜ん
「むし・・・・」
<はあ・・はあ・・やっと止めてくれた・・>
「・・・・・・」
<うん?なんだ虫に気をとられていたのか・・・ふっ!ガキめ・・・>
「・・・・・・」
ずりっ
<ん?・・お、おい?何をする気・・・まさか・・やめろおおおおおおお!!!>
「ふい!」
ばちいいいいん!!!
ぷち
『ミ、・・・ミュウ・・・・・・・』
「・・・・・・?・・『みゅー』?」
しーーーん
「みゅー・・・みゅー!みゅー!みゅー!」
 
       Fin.
 
「おはよー繭!おはようございます、おばさん!」
「はい、おはよう。みあちゃん」
「みゅーー!!」
「ふふ、いってらっしゃい・・・車に気をつけるんですよーーー!」
 
「・・・ふふふ、繭ったら日に日に成長していくわ。きっとあなたが天国から見守ってくれたからね・・・ありがとう、プッシーちゃん。」
 
                            (輝く季節へ・・・・)
 
*************************************
こんにちは、雀バル雀です。・・・いかがでしたか?繭とみゅーの物語は、涙なしでは語れないですよね、いろんな意味で・・。全国の繭ファンとみゅーファンの皆さん、広い心で許してね・・。(自分で言うのもなんですが・・『プッシーちゃん』、哀れ・・)
 
参考文献 斎藤敦夫『ガンバと13匹の仲間』(新潮社)<笑>
 
ご感想、苦情、非難はこちらまで・・・masato@yellow.interq.or.jp                                         〜終わり〜


せっかくだから感想を送る

戻る