みゅ〜♪SS 『おとなへのみち1』 作・ひろやん
・・・うわあぁぁーーーーーーん

ーー泣き声。泣き声が雨の音に混ざっている。

・・・みゅーーーーーっ、みゅーーーーーーーっ・・・

ーー雨の中で立ち尽くしている繭。ただ泣き続けている。

繭「みゅーーーっ、みゅーーーーっ」
泣いた。いっしょうけんめい泣いた。『あの人』がどこかに行ってしまった。かなし
かった。だから泣いた。
でも、泣いても泣いてもらくになれない。
繭「みゅーーーー・・・うぐっ、ひぐっ・・・・」
ただ、雨でからだがびちょびちょになって気持ちわるかった。

七瀬「ちょ、ちょっと・・・あんた何してるのよ?こんなとこで」
繭「みゅっ?」

ーー学校帰りの七瀬、繭を見つけ駆けてくる。繭を守るように傘の中に入れる。

七瀬「ああ、もうっ。何?どうしたの、一体」
繭「みゅー・・・」
みゅーだ。みゅーじゃないけど、みゅーなおねえちゃんだ。学校で『あの人』やおね
えちゃんといっしょに遊んでくれる人。
繭「みゅ〜♪」(がしっ)
七瀬「ぎゃーーーっ。は、な、せーっ!濡れた体でくっつくなぁ!って、私の貸した
制服、びしょびしょぉ〜〜〜」
繭「ほえ?」
七瀬「ほえ?じゃないわよ。なんで私がこんな目に・・・って、あんたさっきまでわ
んわん泣いてたの何だったのよ!」
繭「みゅー・・・わからない」
七瀬「はぁ・・・なんかこっちが泣きたくなってきたわ・・・で、そろそろ髪の毛放
してくれないかしら?繭ちゃん」
ぞくっ・・・
繭「みゅー・・・」(放す)

みゅーと家までいっしょにかえった。みゅーはとくになにも話さなかった。わたしも
なんにも話さなかった。でも、みゅーといるとなんか安心できた。とても悲しいこと
があったのに。
繭「・・・・・・」(くんくん)
七瀬「うわっ、な、何よ。食べ物とかは持ってないわよ」
繭「んーん。なんでもない」
七瀬「?・・・変な娘」
だって、においがするもん。学校のにおい、『あの人』といっしょだった学校のにお
い。安心できるにおい…


母「繭っ、ああ、こんなに濡れて。さ、体拭いてあげるからこっちにいらっしゃい」
繭「みゅー・・・ごめんなさい」

ーー繭の家。義母が優しく繭を迎える。

母「何も謝ることはないのよ、繭」
わたしのおかあさん。
母「繭は私の大事な娘なんだから」
このひとは、わたしのおかあさん。
繭「うん・・・」

ーー繭、母に体を拭いてもらう。気持ち良さそうに目を細めたりしながら。

おかあさんのこと、きらいじゃない。でも、おねえちゃんやみゅーといる方が楽し
い。『あの人』といる方がずっと楽しい。
母「こんなに体冷えちゃって・・・可哀相に。お風呂沸かすからお入りなさい」
繭「・・・おふろ・・・」
母「・・・お母さんと一緒に入る?」
繭「ううん、いい・・・」
母「そう・・・」
おかあさんはやさしい。だから・・・だけど・・・。

ーー風呂に入っている繭。ウミヘビのようなおもちゃをお湯に浮かべて遊んだりして
いる。

繭「みゅ〜♪]
きもちいい。

ーー戸が開き、母が入ってくる。すでに裸。(サービスカット♪)

繭「みゅっ?」
母「たまには一緒に入りましょう、繭」
繭「ほえ〜」

おふろ、あたたかくてきもちいい。
繭「みゅ〜」
母「気持ちいいわね、お風呂」
あたたかくてきもちいい。
母「繭・・・今日、辛いことがあった?お母さん、分かるのよ。ううん、分かってあ
げられるように努力してるから・・・」
繭「・・・」
母「だからね、お母さんのこと信じて欲しいの。繭が辛かったり悲しかったりする時
は、きっと守ってあげるから」
繭「みゅ〜」
あたたかくてきもちいい。
母「今まで、守ってあげられなくてごめんね・・・繭?・・・繭?」

ーー繭、のぼせている。

たいせつな人。すきな人。わたしをみまもってくれる人。とつぜんいなくなった人。
やさしかった人。あたたかかった人。何も言わずにどこかに行ってしまった人・・
・。
繭「う、うぐっ・・・みゅー・・・」

ーー布団で寝ている繭。母が横で見守っている。目を覚ます繭。

母「繭・・・」
繭「・・・う・・・う・・・」
とてもかなしかった。だから泣きたかった。
繭「いないの・・・あのひと、いないの・・・」
母「繭・・・繭・・・」
繭「・・・う、ひぐっ・・・」
母「繭、ほら、おいで・・・お母さんはここに居るから」
繭「・・・おかあさん・・・うぐっ・・・」
母「泣いてもいいの。だって、私は、繭のお母さんだから」
繭「うぐっ・・・うわああああぁぁぁーーーーーーーーーんっ!」

ーー母の膝の上で泣く繭。その頭を優しく撫でる母。

母「今は泣きなさい。そして、もっと強くなりなさい、繭」

やさしい人。あたたかい人。おかあさん。
今日、はじめておかあさんはあたたかいと知った。


つづく

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サブタイトルとして『もうひとつの繭の物語1』というのが付きます。
意味は特にありません。(ただのパクリ)

前にタクのSSコーナーに投稿したものです。
少し加筆修正をしました。
母を華穂と書こうとしたんですが、ちょっとニュアンスが違うなぁと思って、そこは
そのままです。(母っていう字を使いたかった)

前に書いた時からそうなんですが今になって直そうと思っても、繭の一人称は難しく
て改良できませんでした。
結局読みにくい文章形態になってるかもしれません。(僕にはこれが限界)

あと一応、舞台背景としては、
繭シナリオのバッドエンド後ということになっています。

暇があればあと続きの2話もどうぞ。
忙しい時にわざわざ読むほどのもんじゃないですが(笑)


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