『「おかあさん」』 作・雫
繭。
繭は、私に泣きつかない子だった。
私は・・・本当の母親じゃないから。
だから、あの子はずっと慰められることを知らずに生きてきた。
でも、あの男の子と女の子が現れた頃から、繭は少しずつ心を開いていった。
そして・・・
「う〜・・・」
「どうしたの、繭・・・?」
「・・・・・」
「なにか悲しいことあった・・・?」
「・・・・・」
「そう・・・可哀想にね」
「・・・・・」
「繭・・・ほら、おいで」
「う〜・・・」
「ほら、繭」
「う〜っ・・・」
「ほんとうに悲しいときはね、泣いたって構わないのよ」
「・・・・・」
「ほら、繭、おいで」
「・・・・・うぐっ・・・うあああああぁぁぁぁーーーーーんっ」
そして、繭が初めて私の膝で泣いた・・・。
あの日から、私たちは本当の母娘になれたのかもしれない。
たとえ、血が繋がっていなくても・・・心を分かちあえるようになったのだか
ら・・・。
ごめんね。繭。
それなのに・・・おかあさんは繭を置いていってしまう・・・。
・・・でも、もう大丈夫だよね・・・繭は強くなったもの・・・。
それに・・・悲しいとき・・・辛いとき・・・慰めてくれる人がいるものね。
病室の窓から、あの男の子が走っていくのが見える。
そう・・・今日は繭の卒業式だものね。
卒業おめでとう、繭。
おかあさんはいつでも側にいるからね。
繭。
私の愛しい娘。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
昔、タクSSに書き込みしたものです。(笑)