みゅ〜♪SS 『メイドなしいな 後編』 作・ゆーき
部屋に戻ってカードゲームを初めてからからおよそ20分後
事態は思わぬ方向に進展していた。
 
 「ふ、不覚…まさか俺が負けるとは…しかもメイド服着るハメになるとはな…
  これ、住井なんぞに見られた日には一生ゆすりたかられるに違いないな。」
 
そうなのだ。何の間違いか俺は椎名に負けたのである。
そもそも俺が調子に乗って
『今度のゲームで俺が負けたらメイドさんになってやるよ』
などと宣言したのが間違いだったのだ。
そして現在、俺はメイドさんの格好をしている。
鏡で自分の格好を見るのが怖い。そんな俺を見る椎名の目は何やら嬉しそうだ。
 
 「みゅ〜♪こうへいかわいい」
 「そ、そうか?ひょっとして似合ってたりするか?」
 「うん」
 「ううっ、今ほんの少しだけ嬉しかった自分が嫌だ…。」
 
(ピンポーン)
 
 「ほえ?だれか来た」
 「みたいだな、椎名はそこに居な。俺が出てくるわ」
 「うん」
 
俺は椎名を部屋に残して玄関へ向かった。
 
 「はーい、どちら様でしょうか?」
 「長森ですけどもーってあれ、浩平?」
 
どうやら長森が来たらしい。
新聞の勧誘やセールスでは無い様なのでとりあえずドアを開けてやる。
 
 「何だ長森か。どうしたんだ、今日は?」
 「繭に用事があっておうちに行ったら浩平の家に行ってるって聞いて…って………
  ………………………………」
 
急に長森が沈黙した。
 
 「何、どうかしたか?急に黙っちゃって。」
 「…ねえ。浩平ってそういう格好するの、好きだったんだ。」
 「へ?何の事…って、ぐあっ!し、しまったぁ〜メイド服着たままだったかぁ〜!」
 
そう。
俺はメイドさんの格好をしているのをすっかり忘れそのまま玄関に出てしまったのだ。
まるで漫画なお約束のパターンである。
でもまあ、最初に出くわしたのが長森だったのがせめてもの救いではある。
 
 「い、いやこれはだな、住井が遊びに来ててトランプの罰ゲームでだなぁ…」
 「(キコキコキコ)あれ?長森さんか?(チリーン)おーい、折原ん家で何やってんの?」
 
それらしいナイスな言い訳をしている矢先に自転車に乗った住井本人が通りすがる。
運命のいたずらもここまで来るとただの厄災だ。
もし神様が目の前にいたならば天罰など恐れずに思いっきりグーで殴っていただろう。
 
 「ぐあっ!く、来るな住井っ!お前は、お前だけは来てくれるなぁ〜〜〜〜〜〜!」
 「あれ、折原がそこにいたのか。何?どうした…ってお、お前………」
 「うううっ…よりにもよって一番見られたく無いヤツに…」
 
ついに見られてしまった俺の恥ずかしい姿。もうおムコにいけないかもしれない。
 
 「…悪ィ、俺、用事があるから帰るわ…。」
 「ま、待て住井!」
 「そうか…お前は俺の手の届かない世界へ行ってしまったんだな…
  グッドラック!あーんどアバヨ!俺のかつての親友!(チリーン キコキコキコキコキコ)」
 「過去形にするんじゃ無いっ!あっ!こら、待てーっ!住井―っ!」
 
俺の叫ぶ声も空しく、住井と自転車は背を向けて走り去っていく。
それを呆然と見送る俺達。ちょっと気まずい空気が漂っている気がする。
 
 「わ、私もそろそろ帰るよっ。じゃあ…。」
 「お、お前まで…待てよ!椎名に用があって来たんじゃ無いのかよっ!?」
 「あっ、そうそう。そうだった。やっぱり来てたんだ。あ、そっか…
  どうせ繭相手にしょうも無い遊びでも教えてたんでしょう?
  それでそんな怪しい格好を…。」
 「ま、まあ、そんな所かな。」
 
さすがは長森。
長年俺の世話を焼いて来ただけあって俺の行動パターンはすっかりお見通しだ。
 
 「だめだよぉ、繭に変な遊び教えたらぁ。」
 「ん?メイドさんごっこは変な遊びか?」
 「普通はしないと思うよ。」
 「うーむ、男のロマンだと思うのだが…」
 「それ、浩平だけだと思うよ。」
 「そんな事は無いと思うぞ…ってまあ、いいや。
  そろそろご近所様の視線が痛くなってきた。とにかく中に入れよ。」
 
さすがの俺もこの姿で玄関につったっているのは精神衛生上宜しくないので
とりあえず用事は何であれ長森を中に入れる事にした。
 
 「うん、そうする。」
 「わあ♪おねえちゃんだ。みゅ〜♪」
 
長森の声に気付いていたのか椎名が玄関まで出てきた。
 
 「あら、降りて来たのか。じゃあ、今日は3人でメイドさんごっこだな。」
 「ううっ、私が最後にメイドさんの格好で後片付けとかやらされるんだよ、きっと。」
 「頼りにしてるぞ、だよもん星人。」
 「みゅ〜♪」
 「とほほ…」
 
とまあ、今日もこんな調子で一日が過ぎていく。
やはり椎名と遊ぶのは楽しいし、椎名もとても喜んでくれる。
今日やった様な変な遊びもたまにはいいかもしれない。な?椎名。
 
 「みゅ〜♪」
 
 
 
あとがき
 
どうもこんにちは。このSSの作者の「ゆーき」と申します。
 
このSSは以前みゅー♪連の掲示板に対話文形式で書き込んだ物を小説形式に手直し
した物で、繭がメイドさんだったらという書き込みに触発されたのがきっかけです。
この作品世界は、繭が中学校を卒業してから半年位経った頃のとある日曜日と仮定
しております。浩平や繭が学校を卒業してからどの様になっているかが判らないので
とりあえず日曜日という設定にしてあります。
でも、浩平は例の事件による一年のブランクがあるので大学受験には失敗して
いるでしょうし、繭も高校への進学はまだ難しいのでは無いかと思っています。
まあ、そういった細かい背景をあまり考えないまま作ってしまったので。
こういった小説を書いたのはこれで2回目です。小説という物を書き慣れていない
せいで文体がおかしい所も多々あるとは思いますがまだ不慣れという事でご容赦
頂ければ当方としては有り難いです。
こんな小説ですが、皆様に楽しんで頂ければ幸いです。



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